恩師と、ゆる体操の意外なつながり
鹿児島県にある国立の体育大学、鹿屋体育大学。その女子バスケットボール部は、長年、全国大会でベスト16の壁を越えられずにいました。体格にも恵まれず、有力選手が集まりやすいチームでもありません。
当時の監督は、私が中学生の頃にバスケットボールを教わった恩師、清水先生でした。
実は、私にゆる体操を教えてくれたのも清水先生です。当時の私は、ゆる体操がパフォーマンスを大きく変えるようなトレーニングだとは、まだよくわかっていませんでした。
その後、清水先生が鹿屋体育大学の練習にゆる体操を取り入れ、チームが大きく変わっていったことを知り、本当に驚きました。
清水先生は、筋力トレーニング中心だった練習方針を大きく転換し、ゆる体操を取り入れていきました。選手たちの反応は、最初あまりよくなかったそうです。それでも半年ほど地道に続けたある試合で、体格で勝る優勝候補の強豪校を相手に、まさかの大金星。8年間破れなかったベスト8の壁を突破したのをきっかけに、選手たちの意識も変わり、その数年後、鹿屋体育大学はついに日本一になりました。
体を鍛えて筋力を増やすだけではなく、体をゆるめることで、もともと持っている力をもっと発揮できる。
鹿屋体育大学の選手たちの変化を知って、私自身もゆる体操の可能性を改めて感じました。
(詳しい経緯は、こちらの記事で紹介されています)
私にも、同じことが起きた
実はこの話、私にとって他人事ではありません。ゆる体操を続けるうちに、私自身の体にも、はっきりとした変化が起きたからです。
まず気づいたのは、歩き方でした。歩幅も、足の運びも、以前より明らかに軽くなっている。動くこと自体が、なんだか楽しくなってきました。そして気づけば、学生時代にやっていたバスケットボールを、また自分の体で試してみたくなっていたのです。
私は中学・高校・大学と、体育会で10年間バスケットボールをやっていました。大学4年生の秋のリーグ戦を最後に、バスケットボールからは足が遠のいていました。
そんな折、社会人バスケをやっている方に声をかけていただく機会がありました。学生以来、20年ぶりのバスケットボール。緊張よりも、ワクワクする気持ちのほうが強かったのを覚えています。
ところが、コートに立ってみると、自分でも驚くほど体が動きました。ブランクなんてなかったかのように。特にディフェンスでは、現役でプレーしている方たちのパワーやスピードに、しっかりついていけていたのです。ドリブルカットができた時には感動しました!
筋力トレーニングを続けていたわけでも、走り込みをしていたわけでもありません。ゆる体操に出会って5年ぐらい、毎週土曜日や日曜日は本社教室でゆる体操の指導を受け、週2回ほどは自分の教室で教える、という形でゆるめ続けてきた体が、あの動きを可能にしたのだと思います。
バスケットの現場に、ゆるを届ける
この経験がきっかけとなり、その後、公立中学校のバスケットボール部の選手たちにゆる体操を教える機会や、バスケットボール選手への個別指導をする機会もいただくようになりました。中学生はとても素直なので、ゆる体操をした後の試合で、キャプテンの子が何本もスリーポイントを決めたと聞いたときは、私もうれしくなりました。「やっぱり、ゆるって面白いな」と改めて感じた出来事でした。
鹿屋体育大学の選手たちも、私自身も、体をゆるめることで、もともと持っていた力が自然と引き出されていった。そんな共通点があるように思います。
あなたの中にも、まだ引き出されていない力がある
「力を抜く」というと、何かを諦めることのように感じる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、私が実際に体験したのは、その逆でした。20年のブランクがあっても、体を鍛え直さなくても、ゆるめ続けてきたというだけで、あの動きは戻ってきたのです。ゆるむことは、弱くなることではなく、すでに自分の中にある力を、邪魔せずに発揮できるようにすることなのだと、身をもって知りました。
これから、この「ゆるむことでパフォーマンスが上がる」という面白さを、私自身の体験も交えながら、少しずつお伝えしていきたいと思っています。
年齢を重ねても、久しぶりのことでも、「あれ? 私、まだこんなに動けるんだ」と驚く瞬間がある。
私は、そんな体の可能性を、ゆる体操からたくさん教えてもらいました。
あなたの体にも、まだ使われていない力があるかもしれません。
参考文献
清水信行(2009)「身体運動の本質力トレーニング(「ゆる」システム・トレーニング)がアスリート(競技スポーツ選手)にもたらす効果―バスケットボールのプレーを事例に―」『スポーツパフォーマンス研究』1, 32–37.
論文はこちら(PDF)
